2025年8月2日 (土) 4:27
猫に育てられた女
猫には、猫のルールがある。 一、パーソナルスペースを守ること、 一、不用意に追いかけたり、触ったりしない、 一、目と目があったらケンカの合図、 一、目があった時に、ゆっくりとまばたきしたら、それは猫からの愛情表現…など。 考えてみれば、当たり前の話だ。 愚かな猫好きは、猫を見つけるなり、 奇声をあげながら、猫を追いかけ回して、触ろうとする。 しかし、人間が同じことをされたら、 誰もが嫌な気持ちになるだろう。 それは、猫も同じだ。 猫と触れ合う時も、人間と関わる時と同じように接すればいいだけ。 何も難しいことはない。 私は、赤ちゃんの頃から猫と同居していた。 私には、猫のお姉ちゃんがいたのだが、 彼女は、私が危ないことをしようとすると、 止めようと必死になっていた。 私は、3歳くらいから、勝手に玄関の鍵を開けて、脱走を図る癖があったのだが、 家を出ようとするたびに、彼女は抵抗した。 猫は、動物の中でも、母性が強い生き物で、 か弱い生き物を見ると、庇護欲を掻き立てられて、お世話をしようとするらしい。 猫以外の動物に対して、母性を発揮することも少なくはないようだ。 私は、猫に育てられたようなものだ。 赤ちゃんの時から、姉さん猫の姿を見て、 猫社会のルールを学び、 小学校に上がる頃には、野良猫集会に招待されるほど、猫社会に溶け込んでいた。 都会の野良猫たちは、夕暮れ時に、開けた場所に集まって、猫集会をする習性がある。 猫集会と言っても、何か特別なことをしているわけではない。 数匹から十数匹の猫が、円を作り、 日向ぼっこをしたり、毛繕いをしたりして、 思いのままに過ごしている。 私も、猫集会の時は、猫のように振る舞う。 可能な限り、低い姿勢で歩き、一定の間隔を空けて、円を作る。 特に、何をすることもない。 ただ猫の様子を観察しながら、ぼーっとしている。 猫好きにとって、猫集会に呼ばれることは、この上ない幸せだ。 猫社会に認められたような気がして嬉しい。 猫社会に溶け込む経験をしたことで、 ずば抜けた環境適応能力を身につけた。 異種である猫の世界に溶け込めたのだから、 人間の世界で、溶け込めない世界はないはず。 どんな世界に行っても、郷に従う精神を忘れてはいけない。 ネイティブの考えを想像して、尊重し、ネイティブのように振る舞う。 それは、人間界を生き抜く手段であると同時に、自然界を生き抜く手段でもある。 猪に遭遇した時は、自分が無害な生物であることを全力でアピールする。 多くの動物にとって、目を合わせることは、喧嘩を売っているのと同じだ。 ヤンキーでいうところの「メンチを切る」感覚に近い。 急に動くと、猪がびっくりして、襲ってくるかもしれないので、 音を立てないように、ゆっくりと後退する。 そのうち、向こうから離れていくはずだ。 このように、相手の立場を考えながら行動する事が、新しい環境に適応する唯一の方法だ。