2025年8月3日 (日) 12:31
楽園のディストピア
私は、動物や人間の行動を研究する実験が好きだ。 動物や人間の行動についての研究をまとめた書物は面白い。 今回のテーマは、ユニバース25という実験だ。 十分な食料、水、住居があって、 疫病や天敵がない楽園に、ネズミを住まわせたら、どうなるのか? 研究者は、ネズミの飼育に最適な環境を用意し、8組のつがいを放した。 最初は、指数関数的に増えていたネズミも、 600匹を超えたあたりで、人口増加率が鈍化する。 数が増えると、格差が顕在化し始めた。 オスの勝ち組マウスは、広い領土と、多くのメスを独占し、 オスの負け組マウスは、狭いエリアに密集する。 十分な土地があるにも関わらず、だ。 これを人間社会に例えるなら、ドバイの王族と、団地住まいの貧困層だろうか? メスは、ドバイマウスに見染められたセレブネズミと、 団地ネズミとしか結婚できなかった非モテネズミに分かれる? セレブネズミは、ドバイネズミの庇護を受けることで、子育てに専念することができる。 一方で、ドバイネズミに選ばれなかったメスは、無能なオスの代わりに、戦うようになり、凶暴化した。 皮肉なことに、非モテの女ネズミは、 子育てのストレスから、育児放棄をしたり、 我が子を虐待するケースが増えた。 母親から十分な愛情を受けずに育ったネズミは、のちに社会非適合者と化す。 社会非適合者となったネズミは、発情期になっても、メスを誘惑する方法がわからない。 メスにつきまとうストーカーネズミ、 未成熟のメスを狙うロリコンネズミ、 性成熟期を迎えても、早々に競争社会から離脱し、 メスや領土のために争わないニートネズミ… やがて、ネズミ社会の治安は悪化し、 ドバイネズミにまで、影響を及ぼすようになった。 最終的に、生き残ったのは、争いを好まないニートネズミ。 やがて、少産多死社会に移行し、檻の中のネズミは滅亡した。 …檻の中のネズミの世界は、未来の人類の姿か? 非常に興味深い実験だ。